オセロ

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遠目から見るとそれは点のようだった。
長い長い白大理石の床の上にある点。聖堂へと続く廊下のど真ん中に穴を開けるようなやつはいないだろうが、この場所ならばそんな輩がいるような気がしないでもない。
ガヴリエルはとりとめのない考えをすぐに忘却の彼方へと押しやって、点を拾った。
なんてことはない、点は黒が表になったオセロの駒だった。
「んーーー…」
白、黒、白。
裏、表、裏と返していき、また黒の面にもどる。特に妙なところもなくつるつるとぬるい表面は、なんてことはない只のオセロの駒だ。
「なーんでこんな所に落ちてんだ?」
呟く。呟きは思いのほか大きく廊下に響いたが、しかし誰も聞くものはいなかった。